先日スタッフルームで、二代目彫日出に「どんなタトゥーが一番難しいの?」と訊ねました。
「和彫り」とか「ポートレイト」と返ってくると思ってましたが、
「レタリングは緊張するね。」と意外な返答。
それで、もう少し掘り下げることにしました。
レタリングとは、絵ではなく、文字を肌に入れるタトゥーのジャンルのことです。絵より簡単に見えても、実は奥深いです。
レタリングタトゥーを軽視すると、残念な結果になることはよくあります。
残念なレタリングタトゥーのあるある
格好いいはずのレタリングタトゥーが、 残念なタトゥーになってしまう3つの理由:
英語のミス
外国人の間違った漢字のタトゥーは誰でも見たことがあると思います。
僕は、今まで一番ウケた漢字タトゥーは、アメリカ人男性のムキムキ背中のバックピースでした。
イカツイ風神の図柄の横に「婦人」がビミョウな字体で書かれていました。
「Fujin」を検索して「婦人」が出てきたのでしょうか。
他人事だと、微笑ましく思えますが、実は、日本人の英語のレタリングタトゥー にもこの様なミスはよくあります。
自分の肌に一生物を彫るなら、恥ずかしいものは入れたくありません。
汚い
ファーストタトゥーとしてレタリングタトゥーを入れる方が多いです。
初めてのタトゥーは、タトゥーのことや彫師選びはまだあまり詳しくない方が多いです。
安易に「ちょっとした文字を入れるだけ」の気持ちでお客さんはレタリングタトゥーを軽視しがちです。
人のレタリングタトゥー を見るときは、彫師が文字の大きさや、太さや、入れる場所や、身体や筋肉のラインを考えてデザインされてたら、もっと格好よくなったのに、と思うことはしばしばあります。
深すぎる
文字は細かい部分があります。
インクが深く入りすぎると、年月が経つにつれ、文字が滲んできます。
滲むと、「a」と「o」の区別がつかなくなったり、肌が盛り上がってたりして、グチャグチャに見えます。
失敗しないレタリングタトゥー
ファーストタトゥーであっても、以下を守れば、レタリングタトゥーは失敗しません。
スペルや文面のミスをしない
昨今、自動翻訳の技術が進展しており、お買い物や観光に十分使えるものになっています。
しかし、一生物のタトゥーを機械や翻訳サイトに任せてもいい域にはまだ達してません。
これは、技術の問題より、言語の複雑さが原因かも知れません。
ちょっと専門的になりますが、日本語では「主語」と「目的語」がはっきりしない文が多いです。
「愛してる」を英語に翻訳サイトで訳すときを翻訳サイトの観点から考えましょう。
英語のsentenceに主語も目的語も必要なケースが多いです。
翻訳サイトは「愛してる」と入力されて、誰が(主語)、何・誰を(目的語)愛してるのは把握していません。
そこで、翻訳サイトが「愛してる」を統計的に分析して、勝手に主語を 「私」とし、目的語を「あなた」と判断して、「I love you」と出力してくれます。
この場合は、たまたま正解ですが、I love youは広く使われているフレーズだからです。
文面がもう少し複雑な場合、このような幸せな結果にならないこともあります。
複雑な文面の場合、翻訳サイトが主語と目的語を曖昧にしたまま「It loves」(訳=「何かが、愛する」)の様な文法的に間違っていないが、微妙な英語を出力します。
翻訳サイトを使わない
外国語のタトゥーの文面は、必ずnative speaker(その言語を母国語として話す人)にチェックしてもらいましょう。
僕の母国語は英語ですので、Good Times Inkの英語レタリングはすべて自分で確認します。
「間違った英語をGood Times Inkで入れられた」は絶対に言わせません。
フレキシブルに考える
上記の「愛してる」をもう一度考えましょう。
愛してる人の耳元での「私は、あなたを愛してる」は、文法的に大丈夫ですが、場合によって、愛を伝えるのにイマイチかも知れません。
シンプルに「愛してるよ」が しっくりくることが多でしょう。
タトゥーの文法に問題がなくても、格好よくない文面はよく見ます。
日本人も外国人も格好いいと思ってくれるタトゥーを入れて欲しいです。
Traditional styleタトゥーに学ぶ
人を愛する感情は普遍的なものですので、LOVEがタトゥー のテーマになることは少なくないです。
例えば、母親への愛と感謝の気持ちを表すのに、「I love my mother」をtattoo にしてしまえば、英語を母国語とし話す人が見てあまり格好いいと思われません。
マザーコンと勘違いされることもあるでしょう。
Traditional tattooで、母への愛はハートやバラのモチーフにMOMもしくはMOTHERの文字 を入れます。
By Marcelo D’Aloisio (From Pinturas – Flashes – Bocetos Tradicional)
同じように、家族に対しての深い愛の証として「I love my family so much」をレタリングタトゥーにしたい方がいるかも知れませんが、その感情を表すのに、traditional tattooのハートと「FAMILY」や家族の人の名前を入れるのは一つの案です。
レタリングタトゥーを希望するなら、家族に関しての名言やフレーズを選ばれたらどうでしょうか。
例えば:
Home is where the heart is
(どこにいても、やがて帰りたくなるのが家族の愛があるわが家だ)
There is no place like home
(わが家に勝るところ無し)
Home sweet home
(素敵な我が家)
のようなfamilyと家庭に関しての名言を探すことをお勧めします。
もちろん、Good Times Inkで良いフレーズ選びの相談に乗ります。
我々としては、お客様が世界のどこへ行っても、みんなに自慢できる作品を彫りたいです。
La bella vita by Horihide 2
彫師を選ぶ
レタリングタトゥー は簡単だから、キャリアの浅い彫師でも簡単に彫れると安易に思いがちです。
しかし、彫師は和彫りやtraditionalが上手いから、 レタリングのセンスも良いと限りません。
全く違うジャンルだからです。
冒頭で書きましたが、うちの二代目はレタリングタトゥー が簡単とは思っていません。
彫師のこれまでのworkを見る
レタリングはデザイン的にシンプルなものが多いが、シンプルだからこそ、ラインの歪みやインクの滲みが目立ちます。
文字のラインの太さや文字の相対的な大きさで彫師のセンスが現れます。
彫師が実際に彫ったレタリングのサンプルを見てから、彫師を決めましょう。
Serendipity by Horihide 2
綴りや文面を確認してもらう
お客さんが持ってきたデザインの綴りと文法を確認するなど、一見簡単そうなタトゥーでも、真剣に取り組んでくれる彫師を選びたいです。
シンプルなデザインでも、よく考える
Carpe Diem by Horihide 2
簡単な文面でも、身体のラインを上手く使って彫ることによって、同じデザインでも、印象が大きく変わります。
それと、 肘を曲げるとき、タバコを吸うとき、袖からチラッと見えるとき 等、服装や生活習慣を考慮して格好よく見せることを考えて彫ってくれることは大事です。
二代目は、よくお客さんのオーダーに対して、どう入れたら格好よくなるかを、常に考えているのを見かけます。
これは、二代目に限らず、格好よくタトゥーを彫ってあげたいと思っている彫師はみんなそうだと思います。
レタリングタトゥーも同じです。
タトゥーはお客さんのイメージと彫師の技術の共同作品です。
良い彫師を見つけて、イメージしているタトゥーについて相談すると、きっと素敵なタトゥーになります。
一生の宝になる格好いいタトゥー を入れて、enjoy your tattoo lifeができることを願っております。
ジャック アマノ