タトゥーの痛みはどれくらい?痛い部位・痛み対策をプロの彫師が徹底解説

タトゥーの痛みはどれくらい?痛い部位・痛み対策をプロの彫師が徹底解説

ウニちゃん
ウニちゃん

タトゥー

はじめまして、大阪のタトゥースタジオ『Good Times Ink』です。今回は、”タトゥー・刺青の痛み”についてのお話。

ほぼ毎日のように尋ねられる「タトゥーって、どのくらい痛いの?」という質問に対し、「部位による」「人や体調による」「けど多分、大丈夫だよ」と、年間数百件は回答しています。

今回はタトゥーの痛みの徹底解説と題し、リアルな痛みの反応や、皮膚の構造から読み解ける科学的な根拠を交えて、痛みの「正体」を多角的に解説します

前半は一般論なので、後半のインタビューだけサッと読むのもアリ!ですよ。

タトゥーはなぜ痛いのか?痛みの正体とは

針が皮膚に入る深さと真皮層の関係

タトゥーの針は、皮膚の表面から約1.5〜2mmの深さまで入ります。「たった2mm?」と思うかもしれませんが、この2mmの中に痛みの秘密が全て詰まっています。

表皮・真皮・皮下組織を表した画像
引用:https://www.rederm.com/

人間の皮膚は大きく分けて3層構造になっています。

  • 表皮(ひょうひ):一番外側。厚さ約0.1〜0.3mm。ここは常にターンオーバー(新陳代謝)で入れ替わっている層なので、仮にここだけにインクを入れても数週間で消えます。
  • 真皮(しんぴ):表皮の下。厚さ約1〜2mm。タトゥーのインクが定着するのはここです。コラーゲンや弾性線維が網目状に走っていて、マクロファージ(免疫細胞)がインクの粒子を取り込むことで、半永久的に色が残ります。
  • 皮下組織:さらに下の脂肪層。ここまで針が到達するとインクの滲(にじ)みや、色飛びに繋がります。
肌に針が刺さっている様子のスーパースローの映像
※業界では「水彫り」や「空彫り」と呼ばれるインクは使用しない彫り方。基本的にはやることはありません。撮影用。

真皮層には自由神経終末と呼ばれる痛みのセンサーが大量に分布しています。タトゥーマシンは毎秒50〜150回のスピードで針を上下させながら、この真皮層にインクを運びます。

つまり、痛みセンサーが密集しているゾーンを、毎秒100回以上の速度で針が突き刺している。これがタトゥーの痛みの物理的な正体です。

痛点密度と部位の関係 ── 「痛い場所」の科学的根拠

腕のタトゥーの施術風景

ネット上には「タトゥーが痛い場所ランキング」の記事がたくさんあります。脇腹がトップで、腕の外側が楽で……みたいなヤツ。あえて載せません。あんまアテにならないため。

ただし一般論として、部位ごとの痛みの差異が何によって生じるかを、皮膚科学の分野から4つの要素にフォーカスしてみましょう。

① 神経密度

指先、手の甲、足の甲、脇腹、内もも、乳首周辺。これらの部位は日常生活で繊細な触覚が求められるため、神経終末の密度が高い部位です。

「密度が高い=針が1回入るたびにキャッチする痛みの信号量が多い=痛い。」シンプルですね。

神経密度的な観点でいうと、指先や乳首などは痛い

② 皮膚の厚さ・皮下脂肪の量

脂肪や筋肉は物理的な「緩衝材」として機能します。肩やお尻、太ももなど脂肪・筋肉が厚い部位は、針の衝撃がダイレクトに伝わりにくいです。

逆に言えば、肋骨や鎖骨周り、手首の内側のように皮膚が薄くて脂肪がほとんどない部位は、緩衝材なしで針の振動が直撃し、痛い。

体型による痛みの差異

②と同様の理屈により、ふくよかな人は、細めの人に比べ痛みに強い傾向があります。骨ばっている細めの人は、痛い部位が多くなりがち。

加えて、比較的に皮下脂肪が多いとされる女性も、男性に比べると痛みに強いように見られます。もちろん、”単に女性の方が痛みに強い説”も否定できません。

骨に近い、肩のタトゥーの施術風景

④ 骨との距離

骨のすぐ上に皮膚がある場所。膝、脛(すね)、肘、手の甲、鎖骨、頭蓋骨では、マシンの振動が骨に伝わり、痛い。骨には骨膜(こつまく)という神経が密集した膜があり、振動がここに響くと独特の「ズーン」というか、キツい痛みになります。

これは皮膚表面の痛みとは別物で「内側から響く感じ」と表現するお客さんが多い。

この3つの要素が複合的に絡むので、「人によって痛い場所が違う」のは当たり前だと言えます。筋肉量も脂肪量も神経も人それぞれ。ネットのランキングは「傾向」であって「あなたの答え」ではありません。

とはいえ。痛い部位。

千差万別と前述したんですが、一応。満場一致で「痛い!」といわれる部位は下記です。

  • 頭蓋骨
  • 耳(軟骨)
  • みぞおち
  • 乳首(周辺も、本体も。)
  • 背中の一部(背骨・尾てい骨
  • 腰骨周辺
  • 膝裏(最強候補)
  • 足の甲

逆にいうと、それ以外は大体の人が耐えられる程度の痛みかな、と思われます。

マシンで痛みは変わるのか?

タトゥーアーティストは、用途や表現方法に応じた様々な種類のタトゥーマシンを駆使し、作品を作り上げていきます。

3つのタトゥーマシンタイプの画像

コイル・ロータリー・ペンマシンの体感差

  • ロータリー≧ペン>コイル

先ほど10名くらいの彫師に聞きましたが、これで大体一致しています。

正直、お客様がタトゥーマシンによる痛みの違いを気にされても、それでマシンを変える彫師はいないと思うので、悪しからず。(痛みより、作品のクオリティを重視するのがプロの仕事!です。

コイルマシンは構造的にバネ感があり、連続で弾かれてる痛みというか。ロータリーマシンは、よりザクザク感のある鋭い痛み。かなぁ。(ペンマシンも機構はロータリーである。)

施術方法による痛みの差異

タトゥーの施術は、1つの作品の中に、いくつもの異なるテクニックが順番に入っていき、それぞれ痛みの「種類」が異なります。

筋彫り(ライニング)

タトゥーの施術風景(ライン)
二代目彫日出による、Today’s Flashの施術風景

大体のスタイルのタトゥーは、アウトラインから始まります。デザインの輪郭を皮膚に刻む、タトゥーの骨組みとなるパートです。

使用するのはラウンドライナーと呼ばれる、複数本の細い針が円形に束ねられていて先端が一点に集中しているタイプの針がメジャー。

「切れないカッターの先端で皮膚を切られている感覚」「爪楊枝を強く押し当てて線を引いている感覚」などと比喩されることが多いかなあ、です。

瞬間の痛みはかなり強め。サイズやディティールによりかなり変わりますが、施術時間の20〜40%くらいで終了し、次のフェーズに移行します。

シェーディング

タトゥーの施術風景(シェーディング)
二代目彫日出による、Today’s Flashの施術風景

ラインが終わったら、次は影やグラデーションを入れるシェーディング。というか、厳密には黒色を入れることが一般的です。(なんだけど人による。今回、二代目彫日出は、影の表現にグレー使ってるね。)

使うのはマグナムと呼ばれる幅広の針や、ラウンドシェーダーと呼ばれる針がオーソドックス。7〜15本以上の針が横一列や円形に並んでいて、広い面積をカバーします。

これは言葉にできない痛みで「グリッグリッ」みたいな。「グリューー」みたいな感じ。

ただ朗報です。ライニングが耐えられたら、多分耐えられますよ。何故なら、ライニングの方が瞬間的には痛く、一回はラインで耐えられた場所なんですから。

加えて、そろそろ防衛本能的なノリで、脳内麻薬であるアドレナリンやエンドルフィンが分泌され、なんか慣れてくるんですよね。

これはほぼ全員が体験するボーナスタイム。確変突入ですよ

カラー(パッキング)

タトゥーの施術風景(カラーパッキング)
二代目彫日出による、Today’s Flashの施術風景

カラーは大体、濃い色→薄い色で進めることが多いです。人やモノによるけど。色ごとでの痛みによる差異はありません。

ここで1つ、都市伝説を潰しておきます。
「赤色のインクは痛い」これは嘘です。

使用するのはシェーディングと同じようなニードルですが、作品によってはカラーの方が痛く感じるかも。

グラデーションを表現するためや、シェーディングと滑らかにカラーを繋ぐために、すでに彫られている箇所を彫ることがあるからです。

施術時間によっては、エンドルフィンと体力が切れ、お外も次第に暗くなってきて、逆に痛くなってくるフェーズ。人によるけど大体3〜4時間で、次第に痛くなってきます。

ボーナスタイム、終了。

拭いて終了、お疲れ様でした。

3つの工程を経て、施術が完了したタトゥーの写真

最後に、残ったワセリンやインクを綺麗に洗い流し、清潔なペーパー等で拭きあげて終了。お疲れ様でした!
90年代の雰囲気が漂う、ジャパニーズ・クラシックなタトゥーになりました。

稀におられる「タトゥーの痛みはええんやけど、拭く時の痛みが耐えられへんわー!」という方へ。「絶対タトゥーの痛みの方が痛いよ。」。


【実録インタビュー】施術中の本音を3名に聞いてみた。

※実際にインタビューをしております!一応、証拠に。字幕ついてるから見ても面白いよ。

20代・女性・手の甲・ブラックアンドグレイ

  • 手の甲は全然痛くないです。ちょっと関節痛いかな、くらい。」
  • 「今まで一番痛かったのは、足の甲です。なんかめっちゃ骨に響く。骨に響く系は苦手ですね。」
  • 「逆に一番痛くなかったのは背中とかですかね。腰の部分も痛くなかったです。」
  • 「痛みはタワシでゴリゴリされてる感じ?
  • 「ギリギリまで飲酒してたりして、出血とか腫れは少しあるけど、痛みは変わらない。」

いや、リアル、通説と全然ちゃうやん。酒飲んで来てはりますやん。(※当店としては、推奨は致しておりません。)
—しかし、一切の弱音を吐かずタトゥー施術を受けられる姿、感服いたします。ご協力、ありがとうございました!

40代・男性・背中

  • 「背中は、痛いです。」
  • 「今まででは、背中の脇腹がやっぱ一番痛かったかなぁ…。」
  • 「逆に太ももの前側・横側は痛くなかったです。」
  • 「昔仲間内で流行ってた、スタンガンをバチバチって当てられてる感覚に近いかもしれない。」
  • 「最初の方に比べたら、最後の方は痛いですね。長い時間 彫ってたら体力がなくなっていくんでしょうね。」

背中も仕上がって、格好良くなってきましたね。トータルで100時間以上は痛みに耐えてるはずでしょう、尊敬いたします。

20代・男性・太もも〜お尻

  • 「今日の場所は、マシです。
  • 「今まで一番痛かったのは、背中の尾てい骨ですね。」
  • 「お尻の上(ぷりぷり部)は痛くなかったです。」
  • 「僕は脚より腕のほうが嫌いやった気がします。」
  • 「1セッションの最大で5〜6時間。4時間超えるとキツくなってきますね。顔色も悪くなってくる。」
  • 「細い針が痛い。カラーパッキングよりラインのほうが痛いかなあ。
  • 「コイルマシンは、音がうるさいから耳が怖い。音から痛くなってくる感じ。ロータリーの方が静かで、集中できる感じはする。」

色々彫られているタトゥーファンだからこその感想、ありがとうございました!
私(筆者)も尾てい骨が一番痛かったです。仲間! 


痛みを最小限にする4つの準備・対策

さて。ここまで、長らく読んでいただいた方へ。お礼(?)に、プロの我々から痛みに対するTIPSをご紹介し、本記事は終了とします。全部行っていただくと、体感50%まで抑えられます(持論)。是非!

バラのタトゥーの施術風景

【施術前】事前にビビっておくこと

冗談抜きで下手したら一番効果あるTIPS、事前に痛みに対するハードルをあげておくこと。

「自分痛がりだしなぁ」「手首って痛いらしいしなぁ」って、ビビっておくのに越したことないです。そしてこの記事で怖がるあなたもまた、正常です。

でも大丈夫。大体の人は耐えられます。

99%超える人が、タトゥーの施術を完了できています。「そんなもんかって思った!」って人が大多数。だから大丈夫、注射みたいなもんよ。

【施術前】体調管理の鉄則

加えて「痛みに長時間耐えられる体調を整えておくこと」は非常に重要。

  • 施術前の適度な食事
  • 前日の十分な睡眠

これくらいはやっておいて損ないですよ。医学的観点では、エンドルフィンはアミノ酸から作られるそうなので、良質なタンパク質をとろう、だそう。

まぁ俺たちタトゥー好きは、親不孝じゃなくて健康優良不良少年なので細かいことは気にしないぜ。

【施術中】呼吸法とメンタルコントロール

そんな我々も彫られる際は、弱音を吐いたり、痛がって身体をよじったり…作品に影響することはしないよう心がけています

だってその方が、早く、綺麗に、気持ちよく、タトゥーが仕上がりますから。

  • 呼吸を止めたりせず、一定に保つ
  • めちゃくちゃ身体の脱力を意識する
  • 痛みを受け入れる(重要)

もう、強張っても、痛いって言っても、息止めても、何しても痛いのは痛いんで諦めましょう。待ってたらエンドルフィン側からお迎えにやってくるんで。

【施術中】彫師とのコミュニケーション

腕の後ろ側のタトゥーの施術風景

音楽を聴いてリラックスして…ってのも一つですが、彫師とコミュニケーションとるのも一つのタトゥーを楽しむ秘訣。

施術時間は、憧れの(?)彫師を独り占めできる時間。ウチに限らず、コミュニケーションを極度に嫌がる彫師さんも少ないですから、色々とお話してみるのもアリかも?

もちろん、ウチの彫師は皆、大歓迎です。

タトゥーの痛みに関するよくあるQ&A

締めくくりとして、痛みに関するよくある質問とその回答を載せておきます。

  • Q. 痛すぎて途中でやめる(中断する)人はいる?
    A. 痛すぎ申告により、施術を複数回に分ける場合はございます。50人に1人くらい。完成できないのは150人に1人くらい。 
  • Q. 最大で何時間くらい耐えられるもの?
    A. 部位によりますけど、MAXでも5〜6時間の施術とか。それ以上やると、熱出たり、体調崩すよ。もちろん当店では、健康に配慮した施術時間で設定していますので、ご安心ください。
  • Q. タトゥーを入れた後の痛みは?
    A. 普通の瘡蓋(かさぶた)くらいの痛みかな?関節などの動きが激しい部位は、日常生活でもちょっと鬱陶しいくらいの痛み。施術後が痛すぎるって人は、ほぼいません。
  • Q. お酒を飲んでから行っても大丈夫?
    A. タトゥースタジオとしての回答は、「施術前日のお酒は控えて下さい。」ですね。私個人に聞かれることがあれば「施術中に二日酔いの文句を言わないんであれば、好きにしたらいいと思う。」ですかね。
  • Q. 初めてのタトゥー、一番痛くない場所はどこ?
    A. 身体の外側というか、上腕の外側、太ももの外側、とかはかなり痛くないですよ。一番と言ってもいいくらい。
  • Q. めちゃくちゃ痛みに弱いです。大丈夫?
    A. 店としての回答は「痛みがひどい場合、仰っていただければ休憩を挟むように致しております。」です。個人的回答としては「不安なのは分かるけど、痛みが怖くて入れないのもまた一つ。痛みとかどうでもよくなるくらい、タトゥーが入れたくて仕方なくなったら、入れたらいいよ。」です。
  • Q. 麻酔クリーム(表面麻酔)は使える?
    A. 彫師から麻酔を推奨したり、まして塗布したりすることはないです。勝手に買って、塗ってくる分に関しては止めようもない。けど、絶対に事前に相談して下さい。「彫りやすさ≒作品のクオリティ」に関わるため、最悪の場合、当日の施術ができないこともございます。

タトゥーを入れる「覚悟」ができたあなたへ

ようこそ。痛みに対する「恐怖」も、コントロールできたら「覚悟」だと定義できます。「タトゥーと覚悟」は切っても切り離せない、素晴らしい作品にする上での重要な要素です。

ここで、ドイツの詩人・劇作家シラーの言葉を引用します。

「—苦痛は短く、喜びは永遠である。」

一度タトゥーを入れると、作品はもちろん、我々との関係も半永久的に続きます。当店では、色飛び・滲みがあった際のタッチアップは、もちろん無償で承っておりますので、お気軽にお申し付け下さい。

「覚悟」ができたあなたへ、当店の作品にご興味を持っていただけましたら、こちらから作品をご覧いただき、CONTACTからご連絡下さい。

ご来店を、心よりお待ち申し上げております。


ウニちゃん

執筆 ウニちゃん

30人以上に彫ってもらったことがある、タトゥー愛好家・写真家。 GOOD TIMES INKで、彫師等とお仕事をしています。