刺青とタトゥーの違いとは?10人のプロ彫師が語る、意味と使い分け

刺青とタトゥーの違いとは?10人のプロ彫師が語る、意味と使い分け

ウニちゃん
ウニちゃん

タトゥー

こんにちは、GOOD TIMES INKです。

突然ですが、皆さんは「刺青」と「タトゥー」の違いについて、適切に使い分け出来ていますか?

実は『刺青 タトゥー 違い』は、Googleでも月間7万回以上の検索がある、大人気のトピックです。

そこで、大阪のタトゥースタジオである「GOOD TIMES INK」がプロ彫師10名とともに最適解を明示し、気になるトピックを解消してみます。

後半には「クイズ!刺青 vs タトゥー」も6つ出題しているので、初心者もベテランも、改めて深掘りしてみましょう!

最初に

最適解を明示する!と豪語したものの、まず何点かご承知おきいただきたいことがあります。

  • 日本の国土における、”刺青文化の発祥”については諸説があります。
  • そのため、今回の『刺青・タトゥーの歴史』については、江戸時代以降における『近代の刺青文化』にフォーカスして解説しています。
  • 人によって感覚は様々です。あくまで当店の彫師・アーティストの意見の平均値、であるとご認識ください。

それでは、いきましょう!

結論

「タトゥー=刺青」です。広辞苑にもそのように載っております。
その上で、絶妙なニュアンスの差異を徹底解説していきますので、是非最後までご覧ください。

”刺青”の定義

刺青とは

出典:https://www.amazon.co.jp/

「刺青(いれずみ・しせい)」とは1910年に、作家である”谷崎潤一郎”による造語です。

つまり、漢字で表記される『刺青(いれずみ)』とは当て字であり、元来は『入れ墨(いれずみ)』という漢字で扱われていました。
後ほど重要となってきますが、ここでの「刺青」は既に”装飾が目的”で肌にインク・顔料を針で注入する行為」として定義されています。

入れ墨(いれずみ)とは

「入れ墨(いれずみ)」とは”刑罰が目的”で肌にインク・顔料を針で注入する行為」を指す言葉として生まれました。
文献では、1720年(江戸時代中期)に「—犯罪者に入れ墨を施す”入墨・黥刑”の制度を施行した。」と残されています。

刺青と、入れ墨。

上記から、刺青と入れ墨には、言葉の用途として明確に「目的の差異」が見受けられます。
そのため、現代の刺青文化において、彫師の作品を「入れ墨」と呼ぶのは、人と場合によっては失礼にあたることもあります。
(※俺の作品は刑罰のための作品ではない!的な。)

ちなみに、装飾目的の刺青文化の発祥である当時(江戸時代初期〜中期)は、其れを「入れ墨」ではなく「彫りもの」と呼んでいました。

”タトゥー”の定義

タトゥーの語源、”タタウ”

出典:https://www.amazon.co.jp/

「タトゥー(tattoo)」という言葉は、タヒチ語の「タトゥー(tatau)」という言葉に由来します。
文献上では、「1769年にイギリスの探検家キャプテン・クックがポリネシアを訪れた際に、タヒチ語の『タタウ(tatau)』を記録。これが現在の英語の『tattoo』となった。」とされています。

「タタウ(tatau)」はタヒチ語で「叩く」を意味する言葉であり、現地の叩き入れるタトゥースタイル(ハンドタッピング)から、タタウという言葉が用いられているようです。

タトゥー(tattoo)の意味

海外でも、タトゥー(tattoo)は「”装飾が目的”で肌にインク・顔料を針で注入する行為」と広く知られています。

「刺青」と「タトゥー」の違い

和彫りの施術を行う、二代目彫日出の姿

辞書的な意味合いの差異

上記をお読みいただいて分かる通り…。

あくまで辞書的な。公式的な見解としては「刺青」と「タトゥー」に、「ほぼ全く差異がありません」
刺青とタトゥーは、全く同じ言葉を指すとして良いかと思います。

図柄が和風か洋風かも関係なく、身体(皮膚)に、針を使って、インクを入れたら、タトゥーか刺青。どっちでもOKです。

タトゥー業界での意味合いの差異

しかし!!!!!敢えて言います!!!!

タトゥーと刺青に、『若干のニュアンスの差がある!』と!!!!!!

ここまで長らくお読みいただきありがとうございます。
一応、定義だけハッキリさせておきたかったので、解説させていただきました。

安心してください。早速、タトゥーと、刺青の違い!を解説していきましょう!!!

【本編】刺青とタトゥーの違い、現場篇

アメリカントラディショナルの施術を行う、彫師(彫艟)の姿

実際にタトゥー業界における使われ方の差異を、敢えて、説明してみたいと思います。

使われ方の違い

  • 和彫りや和の作品は「刺青」と言いがち。背中一面の和彫りとか、「刺青」って呼ばれる方が多いです。
  • 小さめで、和ではない作品は「タトゥー」と言いがち。レタリング(文字)とか、耳裏の小さいのとか、タトゥーって呼ばれる方が多いです。
  • 大きめの作品、ものによっては「刺青」って言いがち。
  • 伝統刺青に携わる方や、その方の作品のことは「刺青」って呼びたくなりがち。(リスペクトを込めて)
  • 漠然と、おしゃれな作品は「タトゥー」と呼びたくなりがち。和彫りとかって一概にオシャレ!とはちょっと違う。難しい。

使い方

「〇〇くん、背中、何入ってたっけ?一匹鯉?やっぱ背中の刺青仕上がってるの、格好ええねえ。」

「〇〇くんの肘、スパイダーウェブ?いいね〜!肘痛い、てか関節のタトゥーとか、大体痛いよなぁ。」

蜘蛛の巣・スパイダーウェブのアメリカントラディショナル。
スパイダーウェブて、こんなヤツ。蜘蛛の巣。

【要約】使われ方の違い

要するに「大きさ」「入れ方」「スタイル」「彫師の性質」などの要素を基に、若干ニュアンスが異なっているということです。

【補足】よくある間違い

  • 「刺青」は針が深い、「タトゥー」はより浅い
  • 「刺青」は消えない、「タトゥー」は消える

まず上の解釈は、全て間違っていると断言できます。だって辞書的な定義で「タトゥー ≒ 刺青」なんですもん。
かつ、タトゥースタジオのような現場でも、そのような棲み分けはされていないです。

「刺青だから、深めに入れよう!」ってね。「え〜怖い、じゃあタトゥーにしよかな?」みたいなね。一緒です。

刺青 vs タトゥー、どっちクイズ

実は、当タトゥースタジオ「GOOD TIMES INK」は、オールジャンルで様々なタトゥーアーティストがおります。
伝統刺青の一門で、20年以上和彫りを創り上げている「二代目彫日出」や、海外のタトゥーカルチャーに長けた「ESTO」など。

総勢10名に「これ、どっち?」と聞いてみて、作品ごとの「刺青 or タトゥー」を聞き、刺青度・タトゥー度をつけてみました。
※尚、人によるので最大で90%としています。

①五分袖・龍と牡丹の和彫り

五分袖の和彫り、龍と牡丹
作者:二代目彫日出

こちらは刺青度90%、満場一致でどっちかっていうと”刺青”です。タトゥーって呼ぶ人の方が稀だと思います。

あと、「最近のヤツは、機械で彫ってますのん? 昔は刺青っちゅうたら手彫りやけど、こういうのってタトゥーって言いますねやろ?」と仰る方に、たまに話かけられますが。

あんまりそういう区別(施術の方法)も現代ではされていないかと思います。タトゥーマシンで彫ろうが、手彫りだろうが、刺青は刺青。タトゥーはタトゥー。

②胸のアメリカントラディショナル

胸のアメリカントラディショナルタトゥー、フクロウと薔薇
作者:彫日向

こちらは逆に刺青度20%、タトゥー度80%です。ほとんどの人がタトゥーと呼びたくなります。
アメリカントラディショナルなスタイルに、英語の文章とか添えちゃって。

でも、刺青っていう人もいるかも。なんせ大きめなんで。
なので、8:2で、タトゥー優勢でした。

③牡丹のバックピース

牡丹のバックピース・和風
作者:彫日向

そろそろ難易度をあげていきます。

こちらの作品は、和のデザイン・モチーフでありながら、どちらかというとタトゥー的構成デザイン。
当店の結果は、3:7で、タトゥー度30%。刺青度70%でした。

大きさがしっかりあり、和柄のモチーフであるため、刺青と呼びたくなる方が過半数という結果となりました。

④和彫りの見切り・ワンポイント

小さな桜と見切り・額のタトゥー
作者:二代目彫日出

もうだいぶ難しいですよ。アナタは定義するならどちらですか?

和彫りの背景に使用される額(見切り)を使用し、伝統刺青に携わる二代目彫日出の作品です。
作者本人の申告では、これは「タトゥー」。スタジオ全体としても、6:4のタトゥー度60%です。

理由として、入れ方や大きさがタトゥーっぽいことが挙げられます。あまり、和彫りでこのような額・見切りの使われ方はされませんからね。けど、めっちゃむずい。

⑤背中の白龍と薔薇

白龍と牡丹のタトゥー・クラシックスタイル
作者:彫日向

ほぼひっかけ問題ですよね。一見「刺青」と言いたくなりがちな白龍のバックピースですが、当店では満場一致で「タトゥー」。タトゥー度が90%です。

理由としては、薔薇・白龍のモチーフが「タトゥー」っぽいこと、シェイディングもアメリカントラディショナルっぽいこと。

⑥腕〜手の甲の龍赤と黒の龍の刺青・手首

もう、我々もわかりません。好きに呼べばいいと思います。

場所的な入れ方は「タトゥー」っぽいです。けど、オシャレ!みたいなのも違うし。
顔は和彫りっぽいし。伝統刺青の一門の人が彫ってるし。

プロの彫師数人で話し合った結果、「どっちでも良い」でした。

刺青度50%、タトゥー度50%です。

結論・まとめ

「刺青 = タトゥー」です。これ以上でも以下でもありません。
しかしそれは、「中華そば」と「ラーメン」の差異のようなものであり。

昔ながらの醤油ベースのスープで、鳴門と海苔が載ってたら「中華そば」って呼びたくなったりしませんか?
「ラーメンってよりかは、中華そばっぽいヤツが好き!」っていう人、周りにいませんか?

本当、そんな感じのニュアンスの差異です。

中には「ウチのをラーメンって呼ぶな!!!」っていう人もいるんですかね。
おそらくタトゥー業界にはあまりいないので、タトゥーファンの皆さんはそこまで気にする必要ないのでは、と少なくとも当店は思います。

そういえば、巷で稀に聞く「タトュー」だけは確実に間違っているので、優しく「タトゥー」って、教えてあげてくださいね。


ウニちゃん

執筆 ウニちゃん

30人以上に彫ってもらったことがある、タトゥー愛好家・写真家。 GOOD TIMES INKで、彫師等とお仕事をしています。