こんにちは、大阪・アメ村のタトゥースタジオ『GOOD TIMES INK』です。
今回は、黒いタトゥーについてのお話。
作品を探していると、最近よく目にするのが「ブラックワーク」という言葉です。
黒いタトゥーのこと、というのは何となくわかる。でも「ブラックアンドグレイとは何が違うのか?」「トライバルも、全部ブラックワークなのか?」。
そこで問いますが、あなたはどんな黒いタトゥーが入れたいですか?
今回はそれぞれの違いに加え、入れ方やアーティストの選び方まで、当店での使い分けも交えて解説します。また当店の、黒をテーマにした新しいフラッシュ企画『Today’s Flash Noir』もご紹介しております。
はじめに
Today’s Flash Noir
当店のToday’s Flashの新たなラインとして、Noirが仲間入りしました。
先に黒い作品を見たい方は、当店の『Today’s Flash Noir』をどうぞ。
黒を基調にした、一点もののフラッシュを掲載しています。
→Today’s Flash Noirの作品を見る
(※通常のToday’s Flashと同じページの下部に掲載)
「ブラックワーク」の意味、現場での使い分け
ブラックワークとは、黒を基調としたタトゥーを指す言葉。
広い意味では、ブラックアンドグレイやトライバル、ブラックアウトなども含めて、”黒いタトゥー全般を指す言葉”として使われます。
ただ、当店やタトゥー業界で「ブラックワーク」という時は、もう少し狭い意味で使うこともあります。
ブラックワークとは?


例えば、グレーを用いた陰影で描いた作品なら「ブラックアンドグレイ」。
民族的な模様をベースにしたものなら「トライバル」。
和彫りを黒とその濃淡で仕上げるなら「からす彫り」。
そうした別の名前に括られない、黒だけの作品を、とりあえず「ブラックワーク」と呼ぶ…という感覚です。
以下は、当店での呼び分けも含めた説明です。スタジオやアーティストによって感覚が違う部分はありますが、だいたい他のタトゥースタジオ様も含めて、こんな感じで呼んでるんだと思います。
黒いタトゥーの主な6スタイルを比較
まずは、黒を使った代表的なスタイルをご紹介します。
細かいことはさて置いておいて、どんな作品なのかを見ていきましょう。
呼び方が重なるものもありますが、見た目で選ぶなら、ざっくりこんな感じ。スタイル名から、それぞれの作例・説明に進めます。
| スタイル | こんな見た目が好きなら |
|---|---|
| ブラックワーク | 黒い線や面、点の質感を活かした、グラフィックな作品(?)。 |
| ブラックアンドグレイ | 滑らかな濃淡や立体感。人物や花、文字を背景で繋いだ構成。 |
| ブラックトラディショナル | トラッドの図柄を、黒でシックにまとめたもの。 |
| ブラックアウト | 広い面を黒く覆う、強い見た目。真っ黒。 |
| トライバル | 身体の形や筋肉の流れに沿う、民族的な模様を主体にした構成。 |
| からす彫り | 和彫りの図柄や構成を、黒とぼかしで見せるもの。洋彫りと組み合わせたい方にも。 |
ブラックワーク|黒の線や面でつくる、多彩な表現


黒い線で描くもの、ベタッと黒く塗りつぶすもの、細かな点で陰影をつけるもの。ブラックワークの中にも、いろいろな表現があります。
大きさにも特に決まりはありません。小さなワンポイントもあれば、腕一本、背中一面、さらには全身を使って構成するものまであります。
ブラックワークという言葉には、「黒を基調にした表現」という意味と、「スタイル名」としての意味があるんですね。
つまり「ブラックワークが好き」というだけでは、好きな図柄や雰囲気まではわからず「えー黒色のタトゥーが好きな人なんですね!!」って感じ。
ブラックアンドグレイ|濃淡と陰影で描く表現

ブラックアンドグレイは、黒とグレーの濃淡を使って描くスタイルです。黒のベタ塗りに加え、薄いグレーから濃いグレーまでを使い、立体感や滑らかな陰影を表現します。
人物の顔、天使、薔薇、レタリングなどが入った作品を思い浮かべると、イメージしやすいかもしれません。チカーノタトゥーにもよく見られる表現ですね。
(※チカーノには独自の文化やモチーフがあるので、ブラックアンドグレイと同じ意味ではありませんが、ここでは割愛)
ブラックトラディショナル|モノクロで楽しむアメリカントラディショナル

アメリカントラディショナルを、カラーを使わず黒で表現したもの。ここでは、それを「ブラックトラディショナル」と呼んでみます。
ブラックワークという言葉が広く使われるようになってからは、こちらの呼び方をあまり聞かなくなった印象もありますが、やっていることはシンプル。ただ黒いトラッドです。
アメリカントラディショナルといえば、太い輪郭と鮮やかな色、ポップな図柄を思い浮かべる方も多いかと思います。それが黒になると、ぐっとシックな印象になります。図柄はクラシックなまま、色による派手さが抑えられるので、全体を黒で揃えた入れ方も格好いいです。


カラーのトラッドを、黒で彫ることももちろんできます。画像は当店のToday’s Flashの過去作より。
その場合は、黒の濃淡や肌を残す部分を調整して、黒の作品として組み立てていきます。
ただ、最初から黒で描かれたフラッシュは、黒く埋める部分と肌を残す部分のバランスまで、黒で見せることを考えて構成されています。(重要)
図柄だけでなく、「この黒のバランスが格好いい!」と思った一枚を選べる。ブラックワークのフラッシュには、そういう魅力もあります。
アメリカントラディショナルのスタイル自体については、アメリカントラディショナルの解説記事でも詳しく紹介しています。
ブラックアウト|広い面を黒く覆う表現

ブラックアウトは、広い範囲を黒く塗りつぶす表現です。腕を黒く覆うものは、「ブラックアーム」と呼ばれることもあります。見た目のインパクトは最強よ。
飲み屋で「長袖着てるみたいやん!」とか「汗かけるの?」とか、謎のインタビューが始まるよ。
ただ、全部真っ黒だから、どれも同じ…というわけではありません。違いが出るのは、黒から肌に戻る部分。いわゆる「見切り」の箇所。
トライバルのような形で切ることもあれば、ドットのグラデーションで徐々に肌へ戻すことも。

筆者が好きなのは「RAGE AGAINST THE MACHINE」のティム・コマーフォード氏のブラックアウト。和彫りの五分袖のようなフォルムに、抜きの三つ巴をシンメトリーに配置しています。背中と両脚も格好いいからググってみて。
黒く塗る面積じゃない部分に個性が光るんですね。とにかく強い見た目にしたい、かなり思い切った黒の入れ方をしたい、という方が惹かれるのもわかります。令和になって若者の間でも増えましたね。
トライバル|身体の流れを活かす模様と黒

トライバルも、黒を中心に表現するスタイルです。なので、色だけで分類すればブラックワーク。ですが、模様のルーツや構成を含めて「トライバル」や「ポリネシアン」と呼ばれます。写真はサモアっぽいデザインですね。
例えば、サモアやマルケサス諸島などのポリネシアのもの、ボルネオ島にルーツを持つもの。ひとまとめにトライバルと呼ばれていても、それぞれ背景となる文化や模様が異なります。
そうした伝統に由来するものに対し、独自の解釈で構成された現代的な作品は「ネオトライバル」や「ブラックワーク」と呼ばれることが多い印象。
からす彫り|黒とぼかしで見せる和彫り
トライバルの良さは、身体の形に沿って模様を構成できること。平面で見た図柄だけでなく、肩から腕へ、胸から背中へと模様が流れることで、身体に入った時の格好よさが出ます。
大柄の黒いタトゥーを入れたい、筋肉や身体の曲線を活かした構成にしたい。そういう希望なら、候補に入れたいスタイルです。



和彫りにも、黒いタトゥーがあります。黒とその濃淡で仕上げる「からす彫り(烏彫り)」です。龍や鯉、花などの図柄を、カラーを使わずに表現します。
今回の「黒とグレーの濃淡で描く」という定義なら、ブラックアンドグレイともいえますね。ただ、図柄や構成のベースは和彫り。先ほどのチカーノっぽい作品とは、同じ黒とグレーでも雰囲気が違います。
例えば、洋彫り的なデザインも好きだけど、和彫りも入れたい。そういう時は、黒とグレーで揃えることで、異なるスタイル同士でも見た目が収まりやすくなることがあります。色数が揃うので、組み合わせを考えやすいんですね。
もちろん、黒ければ何でも合うというわけではありません。線の太さや黒の量、図柄同士の配置でも印象は変わります。すでに入っているタトゥーと合わせたい場合は、その作品も見せてもらえると、全体を見ながら相談できます。
ブラックワークとブラックアンドグレイの違い
なかでも違いがわかりにくいのが、ブラックワークとブラックアンドグレイです。どちらも黒いし、どちらにも陰影がある。写真によっては、ぱっと見で区別しにくいものもあります。
作品の見た目には、どんな違いがある?

例えば、人物の顔を入れたい。そこにレタリングも、薔薇も入れたい。と、複数のモチーフを、陰影や背景で繋げやすいのがブラックアンドグレイです。ふわっとした仕上がりにはなるんですが、”特有のイカつさ(?)”はしっかり残ります。
天使やレタリングが大きく入った、クラシックで迫力のあるタトゥー。そういう雰囲気をイメージしているなら、ブラックアンドグレイが近いかと思います。
対して、ブラックワークには、もっとグラフィックでモダンな印象の作品があります。


例えば花を描くにも、グレーで滑らかにぼかすのではなく、黒い点の集まりで陰影を描く。この点の質感が残るような、タトゥーマシンらしい表現に、モダンな印象を感じます。
マシンの進化によってできることが増えた、とかいう側面もあるしね。
黒・グレーの使い方と、陰影のつくり方


この2枚を技術的な観点で見比べるなら、注目したいのはシェーディング、つまり陰影の表現方法です。スタイル名だけで技法が決まるわけではありませんが、見た目の違いがわかりやすい部分です。
ブラックアンドグレイでは、黒の濃度を薄めたり、白を混ぜたりでグレーなどを使います。インク自体に濃淡を用意し、それを使い分けて陰影を描くわけです。
一方、黒いインクでも、点の密度や肌を残す量によって濃淡を表現できます。ドット、スティップル、ウィップシェーディングなどの技法を使い、彫り方によって陰影をつくる。こうした作品を、当店ではブラックワークとして捉えることが多いです。
同じグレーに見えても、グレーのインクが入っているのか、黒い点の間に肌が残っていることで薄く見えるのか。写真を少し拡大してみると、点の質感や濃淡の違いが見える作品もあります。
呼び方が重なる作品もある

黒い点で陰影を描きながら、一部にグレーも使う。そういう作品も、もちろんあります。先ほどのからす彫りも、和彫りとしての呼び方と、黒とグレーの色使いとしての捉え方が重なる例です。
名前の境界を突き詰めると、曖昧な作品はたくさんあります。なので、オーダーの際には名前だけで伝えるより、好きな作品を見せてもらえると助かります。「この点々の感じ」「このぼかしの感じ」までわかれば、めっちゃ伝わりやすい!です。
自分に合う黒いタトゥーは?スタイルの選び方
スタイルがわかったところで、実際に入れる場合のお話です。図柄の好みだけでなく、その先にどう増やしたいかによっても、選び方は変わってきます。
モチーフだけでなく、描き方と世界観で選ぶ


「黒い薔薇を入れたい」と言っても、写真のような薔薇なのか、アメトラの薔薇なのかで、出来上がるタトゥーは全く違います。モチーフは同じでも、選ぶアーティストまで変わることがあります。
レタリングや天使を入れて、クラシックでいかつい雰囲気にしたい。
黒いアメトラを集めて、シックにまとめたい。
和彫りの図柄が好きだけど、色は黒とグレーで揃えたい。
ダークで、ちょっと攻撃的な絵が好き。
模様を身体に沿わせて、腕全体を一つの作品にしたい。
好みの作品を探す時は、何が描かれているかに加えて、この辺りの雰囲気も見てみると、選ぶものが変わってくるはずです。
逆に、モチーフは決まっていないけど、好きなアーティストはいる。それも全然アリです。その人の描き方が好きなら、モチーフから無理に決めなくても、フラッシュの中に好みの作品が見つかるかもしれません。
ワンポイントから増やす?腕全体で構成する?


例えば、腕にタバコの箱くらいのサイズで、一つ入れたとします。そのあと、周りにも増やしたくなった場合。
ブラックアンドグレイなら、空や煙などの背景を使い、最初の作品と後から入れた作品を繋いでいく方法があります。間に残った肌をどう使うか、という時に、背景のぼかしが使いやすいんですね。
ただ、単発で入れたトライバルや、黒いアメリカントラディショナルを、同じような背景で繋げるとなると、すこし難しい。もともとの図柄が、それ単体で完成しているからです。
ブラックワークでは、この「一個をポンと入れた時の格好よさ」を重視する作品も多いです。そういうものは、背景で全部を繋ぐより、肌を残しながらスタンプのように増やしていく入れ方が合います。

一方、身体の流れを使った大きな構成なら、個人的には腕一本をまとめてオーダーするのが綺麗だと思います。最初から全体を見て組めるので。もちろん、ブラックアンドグレイだとしても。
「最終的にはスリーブにしたい」と決まっているなら、最初に伝えておくのがおすすめです。
とはいえ、一個だけって決めてたのに増やしたくなるよね。その時は、どう増やすかを一緒に話しながら考えましょう!
図柄から選ぶ?アーティストに構成を任せる?
デザインの頼み方にも違いがあります。あらかじめアーティストが描いたものから選ぶのが「フラッシュワーク」。希望を伝えて描いてもらうのが「カスタムワーク」です。
フラッシュは、初心者向けの簡単な図柄集というわけではありません。(重要)
タトゥーをたくさん入れている人も選びますし、アーティスト自身が選ぶことも非常によくあります。
なぜなら、その人の「得意なもの」と「今、彫りたいもの」が凝縮されているからです。自分で描いて、これを彫りたい!と出している作品ですから、気合いも入っています。気に入ったものがあるなら、そこから選ぶのはかなりおすすめです。
一方、入れたいモチーフや思い入れがはっきりしている場合は、カスタムワークで相談するとよいかと思います。例えば、どうしても入れたい花や文字がある。その意味も含めて、自分のために構成してほしい。そういうオーダーですね。
当店で黒いタトゥーが得意なアーティスト
黒を扱うこと自体は、タトゥーの基礎です。
当店のアーティストも皆、それぞれのスタイルで黒い作品を彫っています。
その中から今回は、黒の使い方や、作品の世界観に特徴がある3名をご紹介します。全員が同じようなブラックワークを彫っているわけではないため、見比べると結構違いがわかるかと!
彫日向|多彩なスタイルを活かした、構成と表現
彫日向は、アメリカントラディショナル、ネオトラディショナル、和彫りなど、いろいろなスタイルをベースに作品を構成するアーティストです。
ひとつのジャンルに収まるというより、同じモチーフでも違う角度やスタイルから表現できる。その引き出しの多さが、彼女の強みだと思っています。


モチーフを描くのが上手いのはもちろん、配置や組み合わせまで含めて、デザイナーのような印象を受けます。伝統的なモチーフを扱っていても、構成に彼女らしさが出ます。
モチーフは決まっているけど、どういう構成にするかは任せたい。そういう時に、彫日向の引き出しの多さが活きます。
彫日斗|黒専門の、緻密なラインと塗り
彫日斗は、カラーを使わない、黒専門のアーティストです。得意なのはトライバルなどのブラックワーク全般。
彼の作品の特長は、黒をしっかり詰める部分が非常に綺麗なこと。輪郭の整い方も含めて、黒だけで構成した作品の精度が高いです。


黒いトラッドを入れたい方、トライバルを綺麗に彫ってほしい方は、ぜひ過去作をご覧ください。
ITCH|漫画・アニメの感性を映した、ダークなブラックワーク
ITCHも幅広い作品を彫るアーティストですが、特に彼らしさが出るのは、アグレッシブでダークなブラックワーク。
漫画やアニメなどのカルチャーから受けた影響を、自分のダークな世界観へと落とし込んでいる。こうした表現は、彼特有のものだと思います。なんかベルセルクとか好きそうでしょ。

黒いタトゥーの中でも、細い線で綺麗なものや、ダークだったりする絵が好きな方には、ITCHをおすすめしたいです。
好みの一枚から選べる、Today’s Flash Noir
さて、ここまで黒いタトゥーの違いを説明してきましたが、最後に当店の新しい企画をご紹介します。
すでに行っているフラッシュ企画『Today’s Flash』に、黒をテーマにしたライン『Today’s Flash Noir』が加わりました。
黒を基調に、新しい表現を探るフラッシュライン
Noirのコンセプトは、使う色を制限することで、新しい表現を作ることです。
カラーが使える時なら色の違いで見せる部分を、黒ではどう表現するか。線を使うのか、陰影をつけるのか、肌を残すのか。制限があるからこそ、いつもとは違う描き方や構成が生まれます。
一点もののデザインから選ぶ
Noirに並ぶデザインは、一点ものです。
黒いタトゥーといっても、表現も入れ方もいろいろあります。まだスタイルを決めきれていない方は、Noirから好みの一枚を探してみてください。作品を見ながら、当店で相談してもらうのも、もちろん歓迎です!
→Today’s Flash Noirの作品を見る
(※通常のToday’s Flashページ下部に掲載。)
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